No.5
「手が出る行動」への適切な対処法
① まずは安全確保
手が出る行動が起きた直後は、子どもたちの気持ちよりもまず「けがや不安」を防ぐことが最優先です。安全を守ることで落ち着いた対応につなげられます。
方法:すぐに子ども同士を距離をとらせる。相手の子どもに「痛かったね」と気持ちを受け止め、ケアする。
注意点:叩いた子をその場で強く叱るよりも、まずはけがや恐怖心が広がらないようにすることが優先。「ダメ!」だけで終わると、子どもには何がいけなかったか伝わらない。
事例:遊んでいる最中におもちゃを取られそうになり、AくんがBくんを押してしまった。→ 保育者はまずBくんを抱き上げて安心させ、その後Aくんには「嫌だったんだね。でも押すと痛いから、“やめて”って言おうね」と伝えた。
② 行動の意味を代弁する
3歳児は「やめて」「貸して」と言いたくても、まだ言葉で表現しきれずに手が出ることがあります。大人が気持ちを代弁してあげることで、子どもは「自分の思いが言葉で表せるんだ」と学んでいきます。
方法:「貸してって言いたかったの?」「いやって言いたかったんだね」と、行動に隠れた気持ちを言葉にしてあげる。
注意点:子ども自身も「なぜ手が出たのか」をうまく説明できない場合が多い。大人が代弁して整理してあげることが必要。代弁する際は短く、否定的な言葉ではなく肯定的に。
事例:お友だちが積み木を崩したとき、Cちゃんが叩いてしまった。→ 支援者は「崩されたのが嫌だったんだね。そういうときは“やめて”って言おう」と伝え、気持ちと言葉を結びつけた。
③ 望ましい表現を教える
「やめなさい!」と禁止するだけでは、子どもはどう振る舞えばいいのか分かりません。代わりになる言葉や行動を繰り返し教えることで、次第に手を出さずに済む方法を学びます。
方法:「順番ね」「“かして”って言おうね」と、どう行動すればよいかを具体的に伝える。 実際に一緒にやって見せて、体験を通じて学ばせる。
注意点:「やめなさい!」と禁止だけすると代わりの行動が分からず、また同じことを繰り返しやすい。繰り返し練習が必要で、1回で身につかないことを理解する。
事例:おもちゃを取り合い、Dくんがつねってしまった。→ 保護者が「つねるんじゃなくて、“順番ね”って言おう」と声をかけ、一緒に「順番ね」とお友だちに伝えさせた。
④ 良い行動を褒める
「手を出さなかった」という行動は、子どもにとって大きな成長の一歩。望ましい行動ができた瞬間に褒めることで、「これを続ければいいんだ」と理解しやすくなります。
方法:手が出そうになった場面で言葉を使えたときにすぐ褒める。「ちゃんと“かして”って言えたね」「順番待ててえらいね」と、具体的に伝える。
注意点:「いい子だね」など抽象的な褒め方よりも、行動をピンポイントで褒める方が理解しやすい。褒めるのが遅れると子どもは「どの行動が良かったのか」が分からなくなる。
事例:ブロックを使いたい場面でEちゃんが「貸して」と言えた。→ 支援者が「手で取らないで、言葉で伝えられたね!」と褒めると、Eちゃんは嬉しそうに笑顔を見せた。
まとめ
3歳児の「手が出る行動」は、気持ちや欲求をまだ言葉で表現しきれないことが大きな原因です。 大人が「安全確保 → 気持ちの代弁 → 代わりの行動提示 → 褒める」の流れを意識して関わることで、子どもは少しずつ“ことばで伝える力”を身につけていけます。
焦らず丁寧に関わりながら、子どもの成長を一緒に支えていきましょう。






