成長事例

セラピー日記

2022/02/17

小さく分けて取り出してー効果的な個別療育(年長/朝のお片付け)

年中さんから通所を続けてくれているれなさん(仮名)は、もともと人と接することが大好き。1年間、発音や会話のしかたに少しずつ取り組んできたことで、おしゃべりが大好きな年長さんに成長しました。教室の職員も、今日はれなさんからどんなお話が聞けるのか、この話題にはどんな彼女らしい反応を返してくれるのかと、いつも楽しみにしているようなお子様です。

一方で、集団の場面では、お話に夢中になって手が止まってしまうところがあり、例えば、朝の登園の時、周りのお友達が上着やカバンを片付け終えて、遊びに行っても、れなさんはいつまでも朝来た格好のまま。保護者様も、就学を控えて、「空気を読む」ことが求められるのでは…とプレッシャーを感じているそうです。

ご相談を受け、れなさんがお話を楽しみながらもメリハリをつけられるよう、教室での支援計画を立てました。まずは、やはり毎日機会がある登所後の荷物のお片付けから取り組むこととしました。保護者様に園のご様子を伺うと、以下のメモを渡してくださいました。

上着…ハンガーにかける
出席カレンダー…シールを貼り、カゴに入れる 
連絡帳…カゴに入れる
(シールとカゴは入口近くの机にあります)
水筒とカバン…ロッカーに置く

セラピストはいただいたメモを元に、このような10項目を作成しました。
【上着…ハンガーにかける】は3項目に分け、

①カバンを床に降ろす
②上着を脱ぐ
③ハンガーにかける

以降も、それぞれ細かく分けました。

④カバンからカレンダーと連絡帳を出す
⑤提出用の机に移動する
⑥カレンダーにシールを貼る
⑦連絡帳をカゴに入れる
⑧ロッカーに移動する
⑨水筒をロッカーに置く
⑩カバンをロッカーに置く

保護者様とご相談の上、園のお荷物のまま登所いただくようにお願いしました。

ステップ1:絶対にできるところだけ 取り出し学習

最初の練習は、登り所後のお片付けの時ではなく、個別指導の時間にスタートします。そして、予め中身を出しておいた空っぽのカバンだけ用意しました。そして、予め中身を出しておいた空っぽのカバンだけ用意しました。

教室の棚をロッカーに見立て、れなさんには「朝のお仕度の練習だよ」と伝えます。次に、空のカバンをポンッと棚に置き、はいおしまいとお手本を見せました。先生の真似(模倣)の学習は、ここまでの積み重ねですっかり慣れているれなさんにとって、これはとても簡単でした。おしゃべりする間もなくポンッと成功。

セラピストはすかさず、「わあ!!れなちゃん早かったね。お口も静かにできていて上手だね。」と褒めて、その後すぐ、大好きなごっこ遊びの時間をたっぷり取りました。

こうして、「⑩カバンをロッカーに置く」という最後のステップを難なくクリアしました。

ステップ2:⑩からさかのぼって…

次のご利用日。今度は水筒とカバン2つを棚にしまうこと、これも簡単にできました。⑨⑩のステップはクリアです。

次の、「⑧ロッカーに移動する」では場所の移動が入ります。まずは棚の1メートル手前に机を置き、スタート地点としました。このステップで行うことは、棚まで歩く、水筒とカバンをしまう、と秒数が長くなります。セラピストが人差し指を口に当てる「シーッ」というジェスチャーを見せながら行い、最後の⑩まで完了したら、「静かに」「すぐに」できたことを特に褒めるようにしました。

ステップ3:失敗を作らない学習

⑧の机と棚の距離を少しずつ離しました。セラピストの「シーッ」のジェスチャーも少しずつ遠くに、目立たないように、存在をフェードアウトしていきました。

このように、失敗の経験を作らないように、内容や補助のしかたを微調整しながら、⑦、⑥、⑤とステップを遡って工程を足していく練習を続けました。⑩まで達成後には常に、その日いちばんの楽しい遊びができるようにもしました。

ステップ4:できたところだけ生活の場へ

個別練習でできるようになったステップは、実際のお片付けのタイミングでも、一人で行ってもらうようにしました。しかし前半の未達成のステップは、セラピストが手厚く手伝い、れなさんに求めることのないようにしました。

れなさんは、毎回1セットずつ、この小さく段階分けした練習を着々とこなし、いよいよ①~⑩までのステップが繋がった頃には、「こんにちは」と言いながら、自分から片付けに向かっていくようになっていました。

れなさんのお話好きは、本来は彼女らしい魅力であり、役に立つスキルの一つでもあります。近い将来は、雑談しながら手も動かすように、より日常らしい自然な形に移行していけたらと思います。

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