成長事例

セラピー日記

2022/02/16

1つの行動から始められる(3歳/アイコンタクト)

「なかなか目が合わなくて、私にあまり興味がないんだと思います…」
「つい弟のほうにばかり接してしまいます。成長のためには良くないとはわかっているんですが…」

けんたさん(仮名)の保護者様が時折おっしゃる言葉が気がかりでした。確かに、少しずつ物の名前をお話しはじめたお子様にとって、日頃からのご家族とのコミュニケーションは大切ですが、そのためには保護者様にとっても、お子様と関わる手応えや実感がなければ、と考えました。

ご家族とけんたさんの関係性の一助になればと考え、私たちは、次に学ぶ行動として「アイコンタクト」を優先することにしました。

ステップ1:欲しいものを目で追う

けんたさんと進めてきたものの中に、「要求語」のプログラムがありました。これは、一緒に遊んでいる最中お子様が欲しいものが目の前にある状況をセラピストが作り、「かして」という言葉やそのもの名前等を発語すると、すぐに手渡されるという方法です。抱っこしてほしい、くすぐって欲しい、手伝ってほしい、など関わりを求める時にも、これを行うことができます。

けんたさんは、「か・あ・て(かして)」と近い音で伝えることは、毎回スムーズにできるようになっていたので、ここでアイコンタクトを作るようにしました。

けんたさん、ミニカーを動く坂道に次々走らせる玩具が大好きなので、教室にあるたくさんのミニカーを使います。いつも通り、かしてと言える度に1つ1つ渡して遊びながら、セラピストはミニカーを顔の高さに持つようにしました。

するとミニカーを目で追うように、けんたさんが顔を上げて言ってくれるようになりました。

ステップ2:相手を見る

この日、大好きなミニカーの遊びはいつまでも続きました。さらにセラピストは一段基準を上げていきます。顔を上げてかしてと言えた時、それだけではすぐにミニカーを渡さず、少し待つと、けんたさんはおや?という様子でこちらに目を向けます。まさにその瞬間、ミニカーを渡すようにしました。

ステップ3:幅を広げて繰り返す

引き続き他の遊びも、顔や目を見たその瞬間、楽しくなるように行っていきました。抱っこやこちょこちょなど体遊びも、セラピストが手を構えて少し待つ、パチッと見た瞬間にやってあげるように。絵本をめくる、シャボン玉を吹く、ボールを投げる、多くの遊びで機会を見つけていきます。

さて、何度も繰り返し練習を積んだあと、その日のお迎えの時間。「今日も頑張ったね」と迎える保護者様に、けんたさんは「か・あ・て」と、車の中で食べるおやつが欲しいことを伝えることができました。そして保護者様に対しても、顔を上げて見て、伝えることができました。

人に興味があるから見るのか、見るから興味を持つのか、それはどちらから始まってもいいと思うこともお伝えしました。一日でみるみる変わっていったけんたさんの様子から、話す力、見る力、さらにその力を使って人を知り関わることも、少しずつ学んでいけるお子様だと、私たちもとても楽しみに感じています。

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